2-28『猿蟹合戦(さるかにがっせん)』
―秋田県秋田市保戸野―
むかしむかし、猿(さる)と蟹(かに)といてあったど。
あるとき、猿が蟹さ、
「蟹、蟹、二人して餅(もち)コ搗(つ)がねがぁ」
いっだど。そしたら、蟹も搗くどて、粉こと臼持って山さ登っだど。そして二人して代り代り餅コを搗いだど
餅コ出来る頃になったら、猿がずるい考え起して、この餅コ一人で食ってやるべどて、臼を、
「ボ―ン」
て、ひっくり返(け)えして、下さ転がしてしまっだど。
「わぁっ、大変だ、大変だ」
どて、どんどん追っかけて行ったど。蟹も、
「あぇっ、やぁ仕方ねでぇ。おしいな」
どて、泣きながら、追っかけで行ったど。
そしたら、途中の藪(やぶ)さ 餅コ べったり付いてあったど。
「あぇ 良(え)がた」
どて、蟹がその餅食っていだら、そこへ猿が来て、
「臼の中には何も無(ね)ぇがった。おれにも食わせて」
いったら、蟹が、
「お前 臼の中さ入ってあったのを探して食えば良(え)ねが」
いったど。そしたら猿がおこってしまって
「ンだか。そんなことなら、これがら山中(やまじゅう)の猿を連れて来て、蟹の甲羅(こうら)、みんなはがして呉(け)るから」
とて、山さ行ってしまったど。
そのあとで、蟹が一人で、
「オエ―ン オエ―ン」
で 泣いでだら、橡(とち)の実(み)が、
「蟹、蟹、なして泣いでる」
て、聞いたど。蟹がその訳をしゃべったら、橡の実が、
「泣ぐな、泣ぐな。おれ助けてやるがら」
いったど。
そごさ、また峰と牛(べこ)の糞(くそ)と臼が来て、みなして蟹を助けることになったど。
それで臼は土間に梁(はり)の上さ、牛の糞は庭の隅さ、橡の実は囲炉裏の中さ、蜂は水瓶の蔭さ、蟹は家の中さ隠れだど
そしたら、ちょうどそこへ猿が来て、
「蟹、どこさ行っだ。出て来(け)ぇ」
いったど。そして囲炉裏さまたがって、
「ああ寒び、寒び」
て、チンチン(がまこ)あぶり始めだど。そしたらその時、
「ド―ン」
て、橡の実はねて、猿のチンチン丸焼けにしたど。
「熱(あつ)でぁ、熱でぁ」
とて、庭の水瓶で冷すどて、そばさ行ったら、蟹に、
「ジャキン」
て、はさまれだと。
「あぁ 痛ででぁ 痛ででぁ」
いってるどこに、今度(こんだ)ぁ、蜂に、
「ギチャッ」
て、ほっぺた刺されで、あわくって逃げる拍子に、牛の糞で、
「ジデ―ン」
て、すべってひっくり返ったど。
そこさ、土間の梁がら臼が、
「ドシン」
て落ちできて、猿は潰されてしまったど。
とっぴん ぱらりのぷう。
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