2-30『親孝行(おやこうこう)な娘(むすめ)』
―新潟県―
むかし、あるところに貧乏なおっ母(か)さんと娘とが暮らしておったと。
娘は未だ年端(としは)もいかない子供であったが、身体(からだ)の弱いおっ母さんになりかわって、毎日人(ひと)さんの所へ行って草取りしたり、手間取りしたりしては駄賃をもらい、薬を買ったり、食べ物を買って、その日その日を暮らしていたと。
そのけなげな親孝行ぶりが評判になって、お城にいる殿様の耳にも届いたと。
殿様は、
「今どき珍らしい話だ。年若な娘らしいが、何ぞほうびをとらせてやりたい。誰ぞ行って確かめて来い」
と、家来に言うたそうな。
家来は早速その村へ行って、いろいろ訊(き)いてまわったと。
そしたら、その評判は大(たい)したもので、誰も彼もが口々にその娘を誉める。
家来は我が事のように嬉しくなって、
「こりゃ、早ようその娘を見たいものだ」いうて、その母娘(おやこ)の住んでいる家に行ったと。
そして、障子の穴からソロッと中の様子をのぞいたら、調度、晩ご飯どきだった。
よくよく見ると、母親は黒っぽい妙なご飯を食べているし、娘はというと白いご飯を食べている。
「はあて、見ると聞くとでは大違い。こりゃ、あべこべだ」
と思うて、なおも見ていたら、娘はご飯を食いあげると食事の後かたずけもしないで、母親はまだ湯を飲んでいるのに、さっさと夜具の中に入ってコロッと寝てしもうた。
家来は、この娘は評判負けのする親不幸な子だな、けしからん。とおこりながらお城に戻ったと。
そして殿様に、
「とんでもない話でした。家の内と外では大違い。病人の母親には黒い妙なご飯を食わせ、自分じゃ、白いご飯を食べていました。おまけに、母親がまだ食べあげないうちに、夜具の中へ入ってゴロッと寝て、起きて来なかったです」
と申し上げた。
「そうか、それがまことなら評判とはあべこべの話だ。ほうびどころでない。そんな娘は罰しなければならぬの。明日にでも召し出せ」いうたと。
次の日、娘はお城に召し出されて来たと。
殿様直々に、
「お前は、母親に黒い、まずそうなものを食わせ、お前は白いご飯を食うていると言うが、それはどういうわけだ」
と訊(き)いたと。そしたら、娘は、
「おら家は貧乏だずけ、米の飯(めし)は食べらんねぇ。病気のおっ母ぁが少しでも力がつくように、おっ母ぁには粟の入ったご飯を食ってもらって、おらは、豆腐のオカラを分けてもらって来て食べているがんです」
と答えたと。
「それじゃあ、母親がまだご膳が終えないうちに、お前は夜具の中へ入って寝るというが、それはどういうわけだ」
「はい、それは、おっ母ぁが寝るときに冷たいから、おらが早う入って寝ていれば、夜具が温(ぬく)まる。温もったどこへおっ母ぁが寝れば、夕(ゆう)さり寒いって言わんで寝られるいに。それで、おらが早よ食べて、ほして夜具を温めるがんだ」
「う―ん、その黒いのは粟飯であったか。お前の食った白いのはオカラであったか。う―ん、毎日そうしているのか」
「あい、とても米が買いきれねぇすけに、そうしています」
「う―ん、夜具も、お前があっためて親を寝かすんだな」
「あい」
「う―ん、けなげなことよのう、のう皆の者」
いうて、涙を流したと。
「よしよし、明日から、お前はオカラを食べないでいいようにしてやるぞ」
というて、ほうびをくれたと。
そのほうびで、母親と娘は一生米の飯を食って暮らせるようになったと。
これで息がひっさけた。
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