3-39『金(きん)の鳩(はと)』
―石川県―
昔々、あるところに、太郎と次郎と三郎がおったと。
あるとき太郎は山へ薪(たきぎ)とりに出かけたと。昼どきになって握り飯をほうばっていたら、
白(しろ)い髭の爺(じ)さがどこからともなくあらわれて、
「その握り飯、半分わけてくれ」
と言うた。
太郎、分けてやらなかったと。白い髭の爺さ、どっかへ行ったと。
太郎が握り飯を食い終わって、また薪とりをしていたら、木の下の洞に落ちて打ちどころが悪く怪我したと。
太郎、泣きべそかいて家に戻ったと。
次の日、次郎が山へ薪とりに出かけたと。
昼どきになって、握り飯をほうばっていたら、白い髭の爺さがどこからともなくあらわれて、
「その握り飯、半分わけてくれ」
と言うた。
次郎、分けてやらなかったと。
白い髭の爺さ、どっかへ行ったと。
次郎が握り飯を食い終わって、また薪をとっていたら、ナタでおのれの足を削ってしまった。
次郎、泣きべそかいて家に戻ったと。
次の日、三郎が山へ薪とりに出かけたと。
昼どきになって、握り飯をほうばっていたら、白い髭の爺さがどこからともなくあらわれて、
「その握り飯、半分わけてくれ」
と言うた。
三郎、爺さに半分わけてやったと。爺さ、
「うまかった。これ、お礼だ」
というて、懐(ふところ)から金(きん)の鳩(はと)を出して、くれた。
三郎、嬉んで、金の鳩と薪を持って家に帰ろうとしたら、日が暮れた。
暗い山径(やまみち)を歩いていたら、みたこともない立派なお城があった。理由(わけ)を話して泊めてもろうたと。
床をのべにきたお女中(じょちゅう)が床の間にきれいな金の鳩があるのを見て、触ったと。そしたらなんと、その手がひっついてとれなくなった。もう一方の手を金の鳩に添えてみたら、その手もひっついた。足をかけて手を引っ張ろうとしたら、その足もひっついた。もう一方の足もひっついたと。
騒ぎを聞きつけて、他の人が助けようとしてそのお女中をひっ張ったら、その人もひっついた。そうやって、次々と人がひっ付いていくものだから、お城中大騒ぎだと。
ところで、このお城の殿様に一人娘がいたと。他に並ぶひとの無いくらい別ぴんさんだったが、おしいことに生まれてこの方、一度も笑うたことがなかったと。
このひっ付き騒ぎを聞きつけて、そのお姫様が出て来たと。
「姫さまぁ、お助け下さい」
と、お女中がなさけない声でうったえるもので、お姫様、つい手を出した。手がひっ付いたと。もう一方の手もひっ付き、足もひっ付き、頭もひっ付いたと。
金の鳩のまわりに、いろんな人がひっつき、その人のうしろにまた人がひっつき、幾重にもひっつき、一番うしろにお姫様がひっついている。
三郎、湯からあがって来たら、このあり様だったので、つい、笑うてしまった。
そしたら、今迄笑うたことのなかったお姫様が、つられて、「ほほほ」と笑うたと。
一度笑うてしまえば笑(わら)うほどに愉快になって、笑いが止まらなくなったと。
「姫が笑うた」
「姫が笑うた」
というて、お城の中じゅう誰も彼もの顔が輝いたと。
三郎が笑い、お姫様が笑い、お城の人たちが笑い、みんなが笑うたら、金の鳩から、一せいにひっついた手が離れたと。
みんなはそれがおかしい言うて、また笑うたと。
殿様は
「今まで姫に遠慮して、この城では声を出して笑う者が無かった。笑うと、こんなにも明るく輝いた顔になるとは」
と大変喜んで、三郎をお姫様の聟殿に望まれたと。
お姫様も喜んで、三郎も喜んで、お城の者たちも喜んで、盛大な祝言を催したと。
そのろん げったん がんなます。
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