3-26『猫又(ねこまた)』
―秋田県―
猫ってのは古くなると猫又という化け猫になるっちゅな。
猫又になると、じゃけんにしていた飼い主には祟(たた)るというし、可愛がってくれた飼い主には祟るようになる前にいつの間にかいなくなるらしい。
むかし、ある家に年をとった猫が飼われていたと。
何分(なにぶん)年も年なので髭(ひげ)も白くなって、いっつも居眠りしているのだと。
ある日、その猫の様子がいつもと違うようになった。
いつもは家の人の間にはさまって、居眠りばかりしていたのに、すうっと家を抜け出して真夜中になっても戻って来ないことが多くなったと。
それが毎晩つづくようになったので、家の親父がある晩、こっそり猫のあとをつけたと。
そしたら猫は一軒の破れ空家に入って行った。
親父が板の割れ目から覗き見て、驚いた。
家の中には灯火(あかり)がないはずなのに物がはっきり見える。その内、家の中に置き捨てられてあった道具がヒョイ、ヒョイと動き出した。
あっちから古箕(ふるみ)、こっちから古茶釜(ふるちゃがま)
向うから古笊(ふるざる)、そっちから古徳利(ふるどっくり)
という具合に茶の間に集まってきて、
古箕に古笊、古茶釜
徳利 徳利 古徳利だぁ
って、踊りはじめたと。親父は、
「おら家(え)の猫ァ、どこに居るやら」
って、よおっく見たら、古棚の上にちょこんと座って、前足上げたり下げたりしている。
古道具たちは、猫の前足の通りにはねたり横に行ったり、宙返りする。
親父は、
「家(うち)の猫、いつの間にあんな大した術おぼえたんだ。やぁ、それにしても道具たちァ楽しそうに踊っているなぁ。おれもひとつまざるべ」
って、そこに落ちていた杓子(しゃくし)を持って、
しゃくし、しゃくし、古杓子だぁ
って、茶の間に踊り入ったと。
そしたら、道具たちと一緒に踊るか踊らないうちに、賑やかな踊りが、ぱたっと止んで家の中も真っ暗になったと。
親父はびっくりして、手さぐり、足さぐりで出口を探し、外へ出て、息せき切って家に戻ったと。
その晩から猫はふっつり家に戻って来なかったと。
どっとはれ。
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