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9『猿地蔵(さるじぞう)』
2011년 11월 10일 21시 47분
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작성자: 망향
9 『猿地蔵(さるじぞう)』
―山形県―
むかし、あったけど。
むかし、あるところに爺さがおって、白い餅(もち)が大好きだったと。
この爺さが川辺りの畑に畑仕事に行ったときのことだ。
昼げに持って行った白い餅を、口のまわり真っ白にして食べて昼寝しとったと。
そしたら、そこに、猿がたくさん来たと。
「やぁや、こんな処に地蔵さまいたや。こんな処ではなく、川向うさ立てたらいいんでねか」
「んだな」
こういうと、猿たちは手車ちゅうもんを組んで、昼寝中の爺さをその上に乗せて、川の中を川向うへ運んで行ったと。
川越え猿の尻(へんのこ)こ濡(ぬ)らすとも
地蔵の尻こ濡らすな
エンヤラ エンヤ
川越え猿の尻こ濡らすとも
地蔵の尻こ濡らすな
エンヤラ エンや
と、川を渡って川向こうへ据(す)えたと。
「やぁや、ええ地蔵さまだ」
「銭コでも上げて拝(おが)むべや」
と、爺さ地蔵に、とこから持(も)って来たのか銭コどっさり上げて拝んだと。
猿が居なくなってから、爺さ、その銭コ、
「わしにお供(そな)えしたのじゃから、こりゃ、わしがもろぉてもええんじゃろ」
と、家に持って帰ったと。
婆さと二人で、その銭コ拡(ひろ)げていると、そこへ隣りの欲張り婆さがやって来たと。
「あれ、あれ、ここの家の爺さと婆さ、なしてこんげに銭コ儲(もうけ)けたや」
「んだな、あれや、爺さが白い餅、口のまわり真っ白にして寝てたれば、猿たちが来て、地蔵さまどんだって、銭コ上げて拝んでったので、その銭コ貰(もら)ったなよ」
これを聞いた欲張り婆さ、急いで家に戻ると、
「爺さ、爺さ、白餅持って畑さかせきに行け。ほして、口のまわりを白くして寝とれや」
とて、爺さが行くとも言わないのに、むりむり追いやったと。
隣りの爺は、しかたなく畑へ行って、口のまわり真っ白くして昼寝しとったと。
そしたら、猿たちが来たと。
「あら、ら、こげなとこさ、まだ地蔵さまいたや。向うさ持って行くべ」
とて、手車組んで、
川越え猿の尻こ濡らすとも
地蔵の尻こ濡らすな
エンヤラ エンヤ
川越え猿の尻こ濡らすとも
地蔵の尻こ濡らすな
エンヤラ エンヤ
と、川向うへ連れていったと。
すると隣りの爺さ、その掛け声がおかしいやら、手車しとる猿の手の毛がくすぐったいやらで
「へ、へ、へ、へ」
と笑ったと。そぉしたら、屁がプッと出たと。
「あら、ら、ら、これぁ、地蔵さまでねぇ。どこかの爺さだ。さぁさ大事(おおごと)した。早く、ぶん流してやれ!」
と、川にほうり投げたと。
隣の爺さ、流されて銭コ儲けるどころでない。ようやっとのことで川から這(は)い上って来たと。どんべからんこ、ねっけど。
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