3-11『爺(じい)はじっとしとれ、婆(ばあ)はバ―ッとしとれ』
―兵庫県―
昔むかし、ある所に爺さんと婆さんがおったそうな。
爺さんは毎日山へ木ィ伐(き)りに、婆さんは川へ洗濯(せんたく)に行っていたと。
あるとき、爺さんが山で飯食(ままく)おうと切り株に腰かけたら、「チッ、チッ」と鳥が啼(な)く。
「どこで啼くじゃろ」
といって、あたりを見わたして探(さが)してみたが鳥は見あたらん。
「近くで啼いたようだったがな。まあ飯食うじゃ」
といって、飯食いかけたら、また「チッ、チッ」と啼いた。
「ありゃ、尻(しり)の下で聞こえた」
爺さんが腰掛けていた切り株を見たら、穴があった。そこへ手を入れたら小鳥が手にさわった。やんわり握(にぎ)って出してみたら雛(ひよこ)だった。
「放(ほお)ってぇたら死ぬるなあ」
爺さんはその雛を持って家に戻った。
「婆さん、ええ物(もん)拾うて来た。これを見ぃや」
「あら、まんたヒヨコじゃのう。どなぇしたじゃぇの」
「うん、飯食おうと腰かけたら、切り株の中におった。放ってぇたら死ぬるから拾って来たわいや。面倒臭(めんどうくそ)うても飼(こう)うちゃろいや」
「ふん、飼うちゃるとも、私等(うらら)ぁにゃぁ子が無ぇじゃし、可愛ぇがっちゃるがの」
というて、ふるいを伏せて飼(か)ってやったと。
飼っているうちにだんだん大きくなって、ふるいではせまっくるしくて飼えなくなった。
で、二人は相談して、元の山へ放してやることにした。
二人で木ィ伐り山のふもとへ行って、
「小鳥ぃやぁ、うちゃぁ貧乏で鳥籠(とりかご)はなし、放ぇちゃるで好きなとこへ行(い)て大きゅうなれ」
というて放してやった。
そしたら小鳥は、はじめは飛び方もおぼつかなくて、婆さんの頭にとまったり、爺さんの肩にとまったりしていたが、ようやく山の中へ飛んで行ったと。
「チッチがいのうなったら、なにやらさみしゅうなったわいや」
「私(うら)も」
といいあって、こ半月(はんつき)たったある日、軒先(のきさき)へ小鳥が飛んで来て、
「爺は木ィ伐り山でじぃっとしとれ。
婆は洗濯川でバァーとしとれ」
というて啼いた。
爺さんと婆さんは、何のことをいうているのかようわからなかったが、可愛がっていたチッチがそういうのだからというて、二人とも小鳥の言う通りにしたと。
爺さんが山でじいっとしていると、兎(うさぎ)が出てきて、着物の前からちょろっとのぞいているチンチン山芋(やまいも)と間違えて、股の間に入って来た。爺さん、そいつをつかまえて戻ったと。
婆さんが川で股ァ拡(ひろ)げていたら、鰻(うなぎ)や鯰(なまず)や鮒(ふな)が、なんぼでも寄って来るので、そいつを捕まえて戻った。
二人は、それらを売って金持ちになったと。
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