2-2『屁(へ)一(ひと)つで村中全滅(むらじゅうぜんめつ)』
―栃木県―
昔、ある村に屁っぴりの娘がおったそうな。
あんまりひっきりなしに屁をこくので、めったに外へ出ることはなかったと。
「この娘(こ)は、一生嫁に行けないのでは」
と、ふた親の心配は日毎(ひごと)に増すばかり。
ところが、ある日、思いがけず隣り村(となりむら)の分限者(じゃ)から、息子の嫁にもらいたいとの話があったと。
ふた親は、恥をしのんで分限者に打ちあけたと。
「この娘は、腹に少々故障(しょうしょうこしょう)がありまして」
「ほう、といわれると」
「はあ、あのう・・・、オナラを・・・するのです」
「何と、オナラですと。そんなもの誰でもしますがな。私なんぞ、日に五、六回はしますな。それとも何ですか、オナラに事(こと)かけて私共とのこの縁談、断るとでも・・・」
「あ、いえ めっそうもない。本来なら、願ってもない良い縁談と思うとりますが、何分、そのう・・・」
「本来も何もありません。願ってもないといわれるのなら、是非ご承諾ください」
これこの通りと、分限者に頭を下げられたふた親は、
「オナラさえご承知して下さるのなら」
「承知」
と、分限者がポンと手を打って、この縁談まとまったと。
いよいよ嫁入りという時になって、母親は娘を呼んで、
「あちらさまは、ああ言って下さったが、お前のは並(なみ)のの屁っぴりではありません。嫁に行ったら充分気をつけて、決して粗忽(そこつ)なことをしてはいけません」
と言って聞かせたと。
祝言も無事済んで、三日たち、四日たち、七日も過ぎると、我慢に我慢を重ねたせいで腹がキリキリ、キリキリ、痛とうてかなわんのだと。
かがんたひょうしに、思わず、ブファ―と一つ、(ひと)、やってしもうた。
娘は、くれぐれも母親に言われたのにと思うと、
「今のはきっと聞かれたに違いない。この先追い出されでもしたら、ふた親に顔向け出来ない」
と思いつめて、とうとう、村の大きな池に身を投げて死んでしもうたと。
すると、聟殿は、
「屁ひとつぐらいで、あんないい娘を殺してしまって、先方に申し訳ない。自分も後を追って死んでしまおう」
と、やはり池に飛び込んで死んでしもうた。
そしたら、嫁と息子に死なれた分限者夫婦は、
「この先頼りにする者たちに死なれて、何でこの世に楽しみがあろう」
と、また続いで池に入って死んでしもうた。
そしたら何と、
「村の親ともいうべき分限者が死んでしまっては、この村にいても暮(く)らしようがない」
というて、村の人々は次々と皆んな池の中に飛び込んで死んでしもうたと。
村にはだあれもいなくなったと。
おしまい ちゃんちゃん。
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