2-4『仁王(におう)か』
―長野県―
むかし、ある寺に仁王門(におうもん)があって、その中に大っきな仁王様がごさらっしゃったそうな。
仁王様は一日中、夜も昼も休むひまなく仁王門の中で立ち続けているので、退屈で退屈でしかたがなくなってしまったそうな。
そこで、ある晩のこと、
「朝から晩まで立ちっぱなしじゃ、おもしろくないな。なあに、夜くらは誰れにも見られんから、ちっとは遊びに出かけてもよかろう」
といって、お寺の周囲(まわり)を夜廻りを兼ねてぶらついたと。
「おお、こりゃ、ええ。凝り固まった身体が段々ほぐれて、新たな力がみなぎってくるのが、ようわかるわい」
お寺が村はずれにあって、誰れにも見られんのをいいことに、それから毎晩出歩くようになったと。
そのうちに、だんだん遠くの方まで遊びに行くようになって、人家のある所までやって来た。すると、真夜中だというのに一軒だけ灯(あか)りがともっている家があった。
近づいて、そっと窓障子(まどしょうじ)の破れ穴から中をのぞいて見ると、婆さんが一人おって、糸車をまわして、糸をくっていた。
仁王様は、初めて見る景色が何ともいえず珍らしい。
「ふーん、何やらブンブン廻(まわ)しとるが、ありゃ、何たらもんじゃ」
と、ふしぎそうに眺めていると、婆さんは、糸車をまわしながら、片っぽうの尻(しり)をひょいと持ちあげて、大っきな屁を、ブフワァンとこいた。 思いがけないことで、仁王様が思わず笑うと、婆さんは誰か村の人かと思って、
「おうおう、匂(にお)うか」
と聞いた。
仁王様はこれを、「仁王か」と言ったのだと早合点して、さあ、魂消た。
「やっ、わしが隠れていることを、ちゃんと知っとる。こりゃいかん」
あわてて逃げ帰ると、もとの通りに仁王門の中に入って、知らん顔をして立ってござらっしゃったそうな。 そればっかり。
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