2-12『梟(ふくろう)の染物屋(そめものや)』
―長野県―
むかし、むかしの大むかし。フクロウは染物屋だったと。
店は、たいした宣伝もせんのに、えらくはんじょうしたそうな。
朝はまた日の出んうちから、色んな鳥がやって来て、思い思いの色や模様に染めてもらっては、得意がっておった。
それを聞いたカラスは、
「そんなに評判の染物屋なら、ひとつ、わしもお願いしてみるか」
というて、やって来たと。
カラスは、その頃はまだ真っ白い身体(からだ)をしておったそうな。
「フクロウどん、わしの羽をいい模様に染めてくれや」
「いいとも、いいとも。わしの腕によりをかけてやってみんべえさ だども、カラスどんよ、しばらくの間動いちゃぁなりませんぞ。
動くと模様がうまく描(か)けませんでのう」
フクロウは筆に墨(すみ)をどっぶりとふくますと何やら模様を描きはじめた。
ところが、カラスはくすぐったくたたまらん。
フクロウが筆を動かすたびに、身体をよじる。
「カラスどん、あれだけ言うたのに、なぜ動くんじゃ。ほれ見なされ、失敗したでねえか。えい、いっそ、こうしてやる」
フクロウはカラスを真っ黒に染めてしまったと。
店先にいた池の鳥たちは、真っ黒になったカラスを見て、笑って馬鹿にしたそうな。
カラスは、
「このフクロウの阿呆たれめ、腹が立ってならん」
と怒ったが、どもならん。それからというもの、カラスは、毎日フクロウの店にいっては、
「もとの白い羽返せ」
と声高(こわだか)にさけぶんだと。
フクロウはカラスが恐くてならん。カラスの出歩く昼間は、ボロ手拭でほおっかぶりをして、木の穴の中でじいっとうずくまっているようになったと。
フクロウは夜になると、「ノリツケホッホ、ノリツケホッホ」って、一声ずつくぎって低い声で喘ぐけれど、あれは、カラスが目をさまさないようにしているんだと。
そればっかり。
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