2-46『爺(じい)と猿と猫と鼠(ねずみ)』
(猿の一文銭)
―鳥取県―
むかしむかし、あるところに爺(じい)と婆(ばあ)が住んでおったと。二人は、婆が木綿(もめん)を機織(はたお)り、爺がそれを町へ売りに行って暮(く)らしをたてていたと。
ある日、爺が木綿を町へ売りに行って、山路(やまみち)を帰って来たら、キ―キ―と猿の鳴(な)き声がした。
あたりを見まわしたら、向こうの木の枝に母猿(ははざる)がいて、猟師(りょうし)が鉄砲(てっぽう)でねらっているところだった。
母猿は手を合わせて、こらえてくれという様子をして拝(おが)んでいる。
猟師が今にも引き金を引こうとしたとき、爺はわざとハックションと大きなクシャミをしてやったと。
そしたら鉄砲の筒先(つつさき)がそれて、弾玉(たま)は爺の肩先(かたさ)に当ったと。
猟師は、とんだことをしたと思って、逃げてしまったと。
爺がうずくまっていると、どこからともなく子猿たちが現れて、傷口をなめたり、草をもんではりつけたりして介抱(かいほう)をしてくれたと。
そして手車(てぐるま)を組んで爺を乗せ、猿の家へ連れて行ったと。母猿が、
「先ほどは危(あや)ういところを助けていただきありがとうございました。」
といって、猿酒(さるざけ)だの果物(くだもの)だの、次から次へと御馳走(ごちそう)してくれたと。
爺が、婆が心配しているからもう帰るというと、母猿は一文銭をひとつくれたと。
「これは「猿の一文銭」といって、世にも大切な宝物ですが、命(いのち)の親様(おやさま)にさしあげます。これを祀(まつ)っておくと金持ちになれます」
というので、ありがたくもらったと。
猿たちは、また、手車に乗せて爺を元の所まで送ってくれたと。
爺が家に帰ったら婆は、
「年の暮も近いというのにそんな怪我をこしらえて、よけいなことをするから・・・」
と愚痴ったと。爺は、
「ほんだけど、そのおかげでこんなええ物(もん)もらった」
といって、猿の一文銭を見せたら、機嫌(きげん)をなおしたと。
猿の一文銭を神棚に(かみだな)に祀っておいたら、婆の機織はどんどんはかどるし、爺が木綿を売りに行ったら、これは上物(じょうもの)だといってすぐに高い値(ね)で売れるし、わずかの間にお金が貯ったと。
爺と婆がにわかに金持ちになったので、近所の人がそのわけを聞きに来た。婆が猿の一文銭のことを自慢げに話してやったと。
そしたら、知らない間にその宝物が盗まれて終(しま)ったと
爺と婆はびっくりして、ほうぼう尋ね歩いてみたけれど、どうしてもありかが知れない。
そこで、家に飼っているタマという猫を呼んで、婆は、
「タマよ、猿の一文銭を三日のうちに捜(さが)しておいで。捜して来てくれたら御ほう美をやる。捜し出して来なければ、これだ」
といって、短刀をギランと抜いて見せたと。
タマはあわてて家を走り出て、すぐに一匹の鼠をつかまえたと。そして、
「鼠よ、うちの宝物が無くなった。三日のうちに見つけて来い。見つけて来たら助けてやる。もし見つけて来ないと尻尾まで食ってしまうぞ」
とおどかしたと。
鼠は食われると大変だから三日の間あちらこちらの家々をまわって猿の一文銭を捜したと。そうして、やっと隣の家の箪笥(たんす)の中にあるのを見つけて、引き出しをかじってそれを取り出し、持って来てタマに渡したと。
タマは喜んでそれをくわえて爺に渡したと。
爺も婆もタマも鼠も、ともどもに大喜びでみながみな、いつまでも繁昌(はんじょう)したと。
めでたしめでたし。
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