2-51『お月お星』
―宮城県―
むかし、あるところにお月(つき)とお星(ほし)という二人の娘がいたと。
お月は亡くなった先妻(さんさい)の子で、お星は継母(ままはは)の子であったが、二人はとても仲が良かったと。
継母は娘のお月を
「お月は何ていやな子だべ」
いうて、憎んで憎んで、いつか殺してやろうと思っていたと。
あるときのこと、父親が急用で上方(かみがた)へ出かけて行った。継母はこのときとばかり、お月を殺す恩案をしたと。
妹のお星は母親のたくらみを知って、
「姉さん姉さん、今夜はおらの布団さ一緒に寝るべ」
いうて姉を誘い、姉の布団の中には西瓜を寝させておいたと。
そうとは知らない継母は、そっと忍んでそれを出刃包丁で突き刺したと。
「これでもう憎らしいお月も死んだべ」
とにんまりしていたら、翌朝になってお月が
「母さん、お早うござりす」
と朝のあいさつをしたのでくやしがったと。
そこで今度は、継母は石の唐櫃(からびつ)の中にお月を入れて、奥山へ運んで行って穴の中へ埋めさせることにしたと。
妹のお星はこれを知って、石屋にそっと頼んで、唐櫃の底に小さい穴を開けてもらったと。そして姉のお月に、
「姉さん、この芥子(からし)の種を持って行ってけさい。唐櫃の中からこの芥子の種をこぼしていけば、春になったら芥子の美しい花コ咲くべから、それをたどりたどり必ず助けに行くから」いうて芥子の種を渡したと。
お月は、お星からもらった芥子の種を石の穴からポトリポトリこぼしながら、山へ連れて行かれ、穴の中へ埋められてしまったと。
やがて冬が去って春が来たと。
野山に花がほころびはじめ、お月のまいて行った芥子の種が芽を出して、美しい花が咲いたと。
お星は母に弁当を作ってもらい、山遊びに行かせてもらった。
お星は芥子の花の咲いている道をたどって、山の奥へ奥へと分け入ったと。そして声いっぱいに、
「お月姉さん、お月姉さ―ん」
と呼ぶと、向こうから細い声で、
「ホ―イ、ホ―イ」
という返事が聞こえて来た。
お星は急いで穴を掘って、石の唐櫃を開けると、お月を救い出したと。
お月はもう、骨と皮ばかりに痩せ細って、髪の毛はト―キビの毛のように赤く縮れていたと。
「んでも姉さん、よく生きていただ」
「おら、お星がくれた芥子の種の残りを食べて、やっともちこたえただ」
いいあって、二人は抱き合って嬉れし泣いたと。
「姉さん、これからまた家さ戻っても殺されるべから、どこか遠くさ行くすべ」
いうて、お月とお星は、手をたずさえてどこへともなく姿を消したと。
それから間もなく、旅に出ていた父親が家へ帰って来たと。土産をいっぱい持って来たが、お月もお星も姿を見せない。女房に
「ふたりは、どこさ行っただ」
とたずねると、女房は、
「たぶん、山さでも遊びに行ったのだべ」
と知らんぷりをしている。
しかし何日待っても娘たちが帰って来ない、父親は心配のあまり六部(ろくぶ)になって、お月とお星を探しに出かけたと。
お月お星が いるならば
何しにこの鉦(かね)っコ 叩くべや
カ―ン カーン
と鉦を叩きながら、どこまでもどこまでも探し歩いたと。
これが鉦叩き鳥のはじまりだと。
お月とお星は、空高くのぼって行って、お月さんとお星さんになったともいわれとる。
えんつこもつこ さげえた。
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