3-21『鬼(おに)ガ島(しま)の目一(めいち)』
―種が島―
むかし、ある村に両親にさきだたれた娘が一人で暮らしておった。
あるとき、娘は山に椎(しい)の実を拾いに行った。
その頃は鬼がいて、鬼ガ島から赤鬼がカゴをかついで娘を盗みに来ていた。
間の悪いことに、娘は山でその鬼に見つかり、あっという間もなく、カゴの中に押し込められてしもうたと。
娘はカゴの中で、叫んだりもがいたりして助けを求めたが、鬼の姿があんまり恐ろしゅうて、誰ひとり、手出しするものはなかったと。
鬼は、娘を入れたカゴを軽々と背負って海辺に行き、つないでおいた黒舟に乗せた。
鬼はその舟についているネジを巻いた。その舟はネジをかけると、千里も走ることが出来る舟だったと。舟は、あっという間に鬼ガ島に着いた。
娘は鬼たちから大層大事にされ、毎日を、まるで女王のように過したと。
しかし、日がたつにつれて、だんだん故郷(ふるさと)のことが恋しくなった。つい海辺に出ては、沖の方をながめていたと。
が、そのうち、鬼と娘との間に男の子が生まれた。
娘は生まれた子を見てびっくりした。目が一つしかなかったと。しかし、生まれたからには、と心をきめて、娘は母親として、その男の子を大事に大事に育て、名前を目一とつけた。
目一は病気ひとつせずに、すくすくと大きくなり、それに並はずれて頭がよくて、何でも自分でやる子だったと。また目一は、母親の心を読むことも出来る子であったと。
ときどき母親が海辺へ行っては、はるかかなたを見ているのを、さみしく思うこともあった。
ある日、目一は、母と子二人のとき、
「お母さんの国へ帰ろう」
というた。母は、目一に心を悟られたのを恥じ、
「お前にまで心配をかけていたんだね。ごめんよ。でも、もういいの、お母さんは、お前とここで暮らしているのが一番いいの」
というた。
それからまたしばらく経ったある日、目一が
「お母さんの国へ帰ろう」
というた。
「ありがとう目一、でもね、お前はお母さんの故郷がどんなところか知らないから、そう言ってくれるのヨ。帰ったら、お前にもいいことはないわ。故郷はときどき思い出すだけでいいの。だから目一や、この話はもうなしにしようね」
というた。
それから何年も経ち、目一は立派な若者に成長した。鬼の仲間うちでは一番の知恵者でゆくゆくは頭目になるのではないかといわれはじめたと。
そんなある日、目一は、
「お母さん、お母さんの国へ一度は行って見てきたい」
というた。母は目一がしっかりした若者になって、自分の考えでそう言っているのに気づいて、とうとうその気になったと。
それからは、鬼たちに気づかれないように準備にとりかかった。食べ物を揃(そろ)えたり、着物に金銀サンゴをぬい込んだりしたと。
鬼たちの留守のとき、母と目一は海岸に出た。黒舟が三艘(さんそう)浮かんでいた。ひとつの舟はネジを巻くと千里はしり、次の舟は万里(ばんり)はしり、その次の舟は、もっと遠くまで走る舟だと。
二人は三番目の舟に乗りネジを巻いた。あっという間に母の国の海辺に着いたと。
さて、母の国へ帰った二人がどうなったかは伝わっていない。
別のお話では、目ひとつが大阪で見せ物になっているのがあるので、もしかしたら、それが目一の、その後の姿かも知れんし、もしかしたら、それは別の鬼と別の娘との間に生まれた別の子の姿かも知れない。
そいぎいのむかしこっこ。
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