3-27『舌切り雀(したきりすずめ)』
―富山県―
昔があったと。あるところに爺と婆があったと。
ある日、爺は山へ柴刈りに行った。爺が弁当を木の枝につるしておいたら、雀が来て弁当を喰うて、そこへ寝てしもた。
爺は雀をとらえて家に帰り、「おちょん」と名付けて、大した可愛がりようだ。
そんなある日、爺は婆と雀を家にのこして山へ柴刈りに行ったと。婆は糊(のり)を煮ておったが、そのうち、雀に、
「川へ洗濯をしに行くから、隣の猫になめられんように番をしとれ」
というて、出掛けたと。
雀は腹がへっていたので、その糊をなめてしまった。
やがて、婆が川から帰って来て見たら、糊がない。
「おちょん、糊はどうした」
と聞くと、雀は、
「隣の猫がなめた」
という。婆が隣の猫を見ると、口のまわりには糊がついておらず、雀の舌を見たら糊が着いておった。婆はおちょんの舌を切って放したと。 爺が山から戻ってきたら、おちょんがいない。婆に「おちょんはどうした」と聞いた。
「糊を煮ておいたら、川へ行っとる間に喰うたので、腹ぁ立って、舌を切って放した」
というた。爺は舌を切られたおちょんが可哀そうで捜しに行ったと。
おちょん雀はどっち行った
舌切り雀はどっち行った
やれ かわいや かわいやな
そういいながら行くが行くが行くと、牛洗いがいたと。
「牛洗いどん、牛洗いどん、ここを舌切り雀が行かなかったかや」
「おお、行ったは行ったけんど、牛の洗い汁お父(とと)の御器(ごき)に十三杯、お嬶(かか)の御器に十三杯吸うたら教えてやる」
爺は飲んだと。そしたら牛洗いが、
「この下へ行くと、馬洗いがおるからそれへ聞け」
と教えてくれた。爺がまた、
おちょん雀はどっち行った
舌切り雀はどっち行った
やれ かわいや かわいやな
そういいながら行くが行くが行くと、馬洗いがいたと。
「馬洗いどん、馬洗いどん。ここを舌切り雀が行かなかったかや」
「おお、行ったは行ったけんど、馬の洗い汁お父の御器に十三杯、お嬶の御器に十三杯吸うたら教えてやる」
爺は飲んだと。そしたら馬洗いが、
「この下へ行くと菜洗い(なあらい)がおるから、それへ聞け」
と教えてくれた。爺がまた、
おちょん雀はどっち行った
舌切り雀はどっち行った
やれ かわいや かわいやな
そういいながら行くが行くが行くと、菜洗いがいたと。
「菜洗いどん、菜洗いどん。ここを舌切り雀が行かなかったかや」
「おお、行ったは行ったけんど、菜っぱの洗い汁お父の御器に十三杯、お嬶の御器に十三杯吸うたら教えてやる」
爺は飲んだと。そしたら菜洗いが、
「この下へ行くと広い竹薮(たけやぶ)があるから、そこへ行くと赤い前掛けをして、赤いたすきをかけて、米刈りしとる」
と教えてくれた。
おちょん雀はどっち行った
舌切り雀はどっち行った
やれ かわいや かわいやな
そういいながら行くが行くが行くと、広い竹薮があった。なお行くと家があった。戸を叩くと「爺か婆か」と聞かれた。「爺じゃ、爺じゃ」というたら、「爺なら早う入れ」という。
爺が家の中へ入ると、おちょんがいた。
「おお、お前ここにおったかい。うちの婆、お前の舌切ったで、爺あやまりに来たわい」
「あやまりなんぞに来てくっさらいでもええのに、そんでもまあ、爺、よく来てくっさった」
いうて、黄金(こがね)のお膳に黄金の箸、白いごはんに魚(とと)そえてご馳走をしてくれた。帰りぎわに、
「爺、重いつづらがええか、軽いつづらがええか」
と聞くから、
「俺は年寄りじゃから、軽いのをおくれ」
というと、爺に軽いつづらを背負(しょ)わせて、
「爺、どこででもひろげんと、家へ行ってひろげれ」
というた。爺、家に帰ってひろげたら、つづらには大判やら小判やらが一杯入っていたと。
爺が喜んでいると婆は、
「俺も貰(もろ)うてくる」
というて行ったと。舌切り雀のお宿へ行って戸を叩くと、「爺か婆か」と聞かれた。「婆じゃ婆じゃ」というたら「婆なら早う入れ」という。
婆が家の中に入ると、おちょんがいた。
おちょんは厠(かわや)の板をお膳にし、垣根の枝を箸にし、砂をとってきて飯(まま)にして出したと。帰りぎわに、
「婆、重いつづらがええか、軽いつづらがええか」
と聞くから、婆は重いつづらをくれというた。
婆に重いつづらを背負わせて、
「婆、どこででもひろげんと、家へ行ってひろげれ」
というた。
婆は見とうて、見とうて、とちゅうであけてみたと。そしたらなんと、つづらの中から蛇やら百足(むかで)やら蝮(まむし)やらが、ぞろめかして出てきて、婆を刺し殺してしもうたと。
語っても候(そうろう)語らいでも候
[필수입력] 닉네임
[필수입력] 인증코드 왼쪽 박스안에 표시된 수자를 정확히 입력하세요.